はじめに
最近「ヤングケアラー」という言葉を各メディアで目にすることはありませんか?
何となく”介護をしている子どもたち”として知っていても
- 子どもが介護をしていて何が問題なのか?
- 子どもの人生にどんな影響があるのか?など、
その実態までは深く知らない方が多いのではないでしょうか。
今回は、そんな「ヤングケアラー」について、あまり聞き馴染みのない方でもわかりやすく解説します。
そもそもヤングケアラーとは?
ヤングケアラーとは”家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者”のことです。
「過度に」とは、ケアによって身体的・精神的な負担がかかったり、子どもであれば当たり前に享受できるはずの健やかな成長・発達に必要な時間(遊び・勉強等)や、自立に向けて必要な時間(勉強・就職準備等)を奪われている状態を指します。
対象年齢の定義は、18歳未満と位置付けられていることが多いですが、18歳をこえるとそこでケア負担の影響が終わってしまうわけではありません。そのため、国の定義では年齢を設定せず「子ども・若者」と表現しています。2024年6月に行われた「子ども・若者育成支援推進法」の改正によりヤングケアラーが法律上定義されたため、「子ども・若者育成支援推進法」の対象である39歳以下とする考え方もあります。
どんな「ケア」を担っているの?
ケアというと、入浴やトイレ介助など身体的な介助のイメージが強いですが、ヤングケアラーが行っている「ケア」は、掃除や洗濯等の家事やきょうだいの世話、感情面のサポート、見守り、日本語が第一言語ではない家族のための通訳等、多岐にわたります。
こども家庭庁ホームページより(https://www.cfa.go.jp/policies/young-carer)(参照 2024-12-4)
ヤングケアラーがケアをしている相手は?
ケアの相手としては、祖父母・父・母・兄弟姉妹が主に挙げらます。
2016年に大阪府、2018年・2020年に埼玉県でそれぞれ行われた調査によると、ケア対象者の疾患は、祖父母は「高齢による身体機能低下・要介護状態」、母は「精神疾患・精神的不安定」、兄弟姉妹は「知的障害・身体障害」のケースが多いことが明らかになっています。
また、ケアをする家族が1人だけの場合もあります。
ケアの対象者や状態、また家族構成等も考慮すると、ヤングケアラーが行っているケアや負担具合はヤングケアラーの数だけ違うことがわかります。
ヤングケアラーはどのくらいいるのか?
存在割合は、行われた調査の規模により多少異なりますが、令和2・3年に行われた厚生労働省の実態調査によると、世話をしている家族が「いる」と回答したのは、小学6年生で6.5%、中学2年生で5.7%、高校2年生で4.1%、大学3年生で6.2%でした。
これは、小学6年生の15人に1人、中学生2年生の17人に1人、高校2年生の24人に1人、大学3年生の16人に1人
がヤングケアラーの可能性があるということになります。
学校の30人くらいのクラスで考えると、各クラスに1人はいることになりますね。
「身近にヤングケアラーなんてめったにいない」と思われがちですが、決して稀有な存在ではないのです。
ケアをすることでどんな影響が出るのか?
ケースによりますが、以下のような影響が出ているヤングケアラーが少なくありません。
- 自分の時間が取れない
- 勉強する時間がとれない
- 友人と遊ぶ時間がとれない
- 睡眠が充分に取れない
- 欠席・遅刻をしてしまう
- 身体的・精神的な負担を感じている
さらに、未成熟な時期に過度なケア負担を担うことにより、学校や日常での生活場面だけでなく、人格形成や社会性の発達、心身の健康にも影響が出ることがあります。
ケアの影響は、ケアをしている「その時」だけでなく、「その後の人生」に長期的な影響をもたらす可能性があるのです。
しかし、ヤングケアラーである子どもたちは
- 自分の気持ちや状況を客観視するのが難しい
- 家の状況を他人に知られることを恐れている
- 自分がどのようにしたいのか自分で決められない
- ケアを優先して、自分のことを考える時間がない
- 自分が支援を受けられる存在であることや、支援自体を知らない
- 根強い日本社会の”家族”像
など、様々な要因から、相談のハードルが非常に高い状況に置かれています。
子どもからのSOSを待つだけでなく、社会側から気づく仕組みづくりが求められています。
周りの大人ができること
このように、多様なヤングケアラーがいる中で、私たち大人は何ができるのでしょうか。
もしかしたら皆さんの中には「家族なんだから、助け合うのは当たり前だろう」「子どもの内に苦労しておいた方が将来のためになる」と思われる方もいるかもしれません。
しかし、何歳であろうと、子どもも1人の人間であり、自分の人生を自由に選択する権利があります。
周囲の大人がこうした子どもの権利を理解し、まず、子どもの目線にたって1人ひとりの声を聴くことが何よりも重要なのではないでしょうか。
こうした社会の1人ひとりの理解は、子どもたちが支援に繋がるきっかけになるかもしれません。
終わりに
EmpathyMediaでは、
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